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喋るのも億劫な様子の彼女を残し、急ぎ足で自販機へと向かった。
病院内は内科ということもあり、どこを見てもぐったりと力の入らない患者ばかりで、俺の生気まで吸いとられるような空気に包まれている。
しかし、俺までマイナスの方に引かれてはならないと内に力を入れ、水とスポーツ飲料の二本を手にしてキララの元へと戻った。
「……おかえり」
キララは相変わらず苦しそうに肩を揺らしながらソファーの背に全体重を沈み込ませていたが、俺の姿を視界に捉えると少し姿勢を正した。
「どっちがいい?」
「……ユーリが……飲まない、ほう」
「どっちもお前の。病人が遠慮なんかするな」
こんな時でも気を遣うキララの右頬に水、左頬にスポーツ飲料をあてて顔を挟むと、「あ、きもちいい」と言って彼女は目を閉じた。
この季節に冷たいものをあてられて気持ちいいと思うのは、十分熱がある証拠だ。
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