第1章 序章

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「学園第3期生、如月翔悟クンね。」 徽章、期生章、名札を見て、彩美が言った。 「目まいと頭痛で授業が続けられなくなり、来ました。」 翔悟は視界がグルグル廻り、ズキズキと痛む頭を両手で抑えながら言った。 「まずはベッドに横になって。」彩美が淡いグリーンで壁や薬品棚が統一された保健室内に案内する。 消毒用のオキシドールの匂いがただよう室内のベッドにパタッと横になる翔悟。 彩美は横になっている翔悟の額に手を軽く当てる。 熱は平熱、顔色も普通。 鎮静剤としてメリスロンを薬品棚から取り出し、カプセル一包をコップの水と共に翔悟に差し出す。 「異常はなさそうだから、これを飲んで様子をみましょう。」 事務的な彩美の言葉に促されて、メリスロンカプセルを水とともに喉に流し込む翔悟。 手先が急に熱くなり、ベッドで横になったまま、ベッド脇に置いてある丸く透明な金魚鉢に右手を伸ばす。 金魚鉢は彩美の趣味で保健室に置き、中に3匹の金魚を飼っていた。 金魚鉢の冷たい感触が右手から伝わってくる。 次の瞬間、彩美は自分の目を疑った。いつもはゆっくり動いている金魚鉢の金魚が狂ったかのように ものすごい速さで泳ぎ、すぐに腹を上にして浮かんできた。 「もしかして、これって負の障気? SF映画に出てくる腕から飛び出す誘導付きの赤や緑の 破壊光線みたいなもの?」 呼吸困難で瀕死の状態の金魚を管理用の網で掬いあげて、緊急避難で コップに移す。コップに移された金魚はまだ苦しそうに口をパクパクさせてあえいでいる。 翔悟は金魚の悲劇を目撃することなく金魚鉢の側面に手を置いたまま既に寝入っていた。 金魚のいない金魚鉢の中には水草が生え、赤・青・緑の鮮やかなカラーサンド(色付き砂)が 堆積している。 「なに?これって渦巻き?」何の前触れもなく、金魚鉢の底に堆積していたカラーサンドが 水面に向けて渦を巻いて吹き上がる。 「如月クンの負の障気と関係あるのかな?」 金魚鉢の中で巻きあがったカラーサンドが複雑な模様を描き始めた。 複雑な模様は、更に模様から人物、背景を描き始めた。
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