投書

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コの字型に並べられた机。 そして、その机には、それぞれ分量の異なる書類が重ねられている。 そんな場所で、カリカリとペンを走らせる音を響かせながら、書類と格闘しているのは、生徒会長である私、皆星(かいせい)と、書記の泉光一(いずみこういち)、会計の花園優歌(はなぞのゆうか)の三人だ。 そう、ここは、生徒会室。 生徒のために、学園を盛り立てる案を検討したり、企画したりすることはもちろん、学園の運営に関わる諸々の処理を行っている場所だ。 「失礼しますっ!」 「すみませんっ、遅くなりましたっ!」 そして、そんな場所に、息を切らせながら入室する者が二人。 庶務の秋峰凛(あきみねりん)と不知火万里(しらぬいまり)だ。 ただ、この二人が遅れたことを責める者はここにはいない。 二人はまだ一年で、しかも担任が、ホームルームで長々と話すことで有名な高崎恭野(たかさききょうや)先生なのだから、同情こそすれ、責めるなど、とてもではないができない。 「構わない。どうせ、高崎先生だろう?」 「「はい……」」 私がそう予測をしてみると、二人はげんなりとした表情で答える。 よほど、高崎先生の話の長さは堪えたと見える。 そして、そのまま二人は自分の席に着いて仕事を始める。 秋峰凛は、小柄でパッチリとした目で、わりと可愛らしい部類に入るであろう…………男だ。 本人はその外見から女に間違えられることが嫌らしいが、私は知っている。 秋峰には本人が知らない隠れたファンクラブが存在することを。 ……本人に害がなさそうだから放ってはいるものの……。 もしその存在を知れば、秋峰は何としてでもファンクラブを潰そうとするだろう。 そして、もう一人の庶務、不知火万里は、いかにも真面目な委員長といった女だ。 ただ、無表情なことが多いため、一部では女王様と崇められているらしいが……ぬいぐるみが好きだという可愛い趣味を知っているため、私にはそんな風には見えない。
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