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「生き倒れ? こんなクソ田舎に? このクソ暑い中? 誰だよそんな能天気なお客さんは」
買い物から帰ってきてすぐさまタバコに火をつけた若い女は、庭にせりだしたハンモックに寝かされている少女を見下ろした。
中学生くらいだろうか。端正な顔立ちに、小柄で少々発育に不満がありそうな胸。今は落ち着いたように静かな呼吸音を立てて眠っている。
そこは田園風景の広がる古き良き平屋の民家だった。木板の壁にサーフボードと水中銛(もり)が飾ってあり、ラジオからは軽快な音楽DJに、時折ノイズが入ったかと思うとニュースチャンネルと混線して入れ替わる。
遠くに蝉の鳴き声と、たまに通り過ぎる車の走行音、激安スーパーの袋がかさばる音とひたすら首を振り続ける扇風機。
「海岸で拾った」
答えたのは渡り廊下の縁側に座りながら釣具の手入れをしている青年だった。精悍な顔つきではあるが、二十歳も迎えてないようなあどけなさ。落ち着いた表情で、帰ってきた女に目もくれず淡々と作業をしている。
「魚は釣れねえくせに、女は引っ掛けてくるとは手グセが手前ぇの親父そっくりだな。色づきおって」
女はルーチンワークのように歩きざまに青年の頭を叩くと、今日の収穫であるバケツの中身を確認した。
「ん、空じゃねえか!」
今度はゲンコツが振り落とされた。
「殴るなよ。釣りどころじゃなかったんだ」
頭を抑える青年の指差す方に、少女の荷物なのか革製のギターケースが柱に立てかけてある。
「それがどうした」
女が不機嫌を隠さず腕を組んで青年を睨みつける。その際に女の凶悪なまでにでかい胸部が強調され、薄手のシャツも手伝って目をそらさずを得なくなるのもいつものことだ。
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