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自分がここに来たんは、八つの時だった。
お父が悪い奴らに騙され、借金返済の為にそいつらに遊廓に売られた。……男だとばれないよう、女物の着物を着せられて。
女将さんは初め『綺麗な子やねぇ~』とえらい喜んだんやけど、自分が男だと知ると手のひらを返したように冷たくなった。
「……女だったら良かったのに……」
男でごめんなさい。一生懸命働きますから追い出さないで……。
「なら、しっかり働いてもらうよ!」
そう言われ裏方に回されたけど、幼くて非力な自分は邪魔もんで。
「邪魔だ!退けっ!」
毎日のように裏方の人たちに邪魔物扱いされたけど、ここを追い出されたら困る自分……。何度か家に帰りたいと、隠れて泣いたこともあった。だからといって黙って抜け出せば、酷い目にあわされることも知っとる。
泣きたい気持ちを押さえ、毎日のように罵声を聞きながら一生懸命働く。そんな生活が数年続いたある日……。
「君、遊廓の子?」
「はい?」
姐さんたちの着物を運んでいる途中、見知らぬ男の人に声をかけられた。
「そうですけど……」
「へぇ、男の子も居たんだ。知らなかったなぁ」
……何なん?
「ちょっと!早く着物を持ってきてよ!」
「あ、はい!今行きます!」
姐さんに言われ、慌てて着物を部屋に運ぶ。
ちらっと後ろを見たら、あの男の人が女将さんに何か耳打ちをしとった。
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