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優はゴソゴソとズボンを履いてベルトを締めて、茜の目の前にドカッと胡座をかいて一言。
「俺のは自分で蒔いた種だけど、鳶沢のは勝手に蒔かれた種だ。そのくせ理想の花が咲かなかったからって、無責任に千切ってポイとか横暴すぎる。鼻摘みしたくなるようなくっさい花にも、咲き誇る自由はあるはずなんだ」
「わたし、くっさい花なの?」
「言葉の綾だ。だからその拳を下げろ」
優が青ざめて後ずさりすると、茜は堪え切れないように「プッ」と小さく吹き出した。
そしてどさりと仰向けになって、無機質な天井をじっと見つめる。
「……わたしね、ここの屋上が好きなんだ。遠くの九隠山がよく見えて……わたしの本当に欲しい居場所はそこにあるんだって、愛しい気持ちと決意を強く実感できる場所だから」
夕陽の朱が差し込み始め、優も小さな日溜まりへと仰向けになった。
無機質な天井を眺めながら、そこに茜の未来の展望を描く。
「だからいつも此処にいたんだな……でも、見つめてばかりじゃつまらねえよ。手を伸ばして、掴み取ってやろうぜ」
「うん」
茜の声音にもう迷いはない。
顔にかかる夕陽が眩しい――眩しすぎて、思わず優は目を細めた。
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