転ノ章6 いざ、九条会へ

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すると間もなくスピーカーから女性らしき音声が発せられた。 『ここより先は九条の関係者以外、立ち入り禁止です。速やかにお引き取り願います』 「――! わたしです。九条会頭首、九条柳(やなぎ)が息女、九条茜です。本日は頭首との面会を」 『お引き取り願います』 守衛と思われる女性からのにべない返事に、茜は取り付く島もない。 その後も頭首――母親との面会を訴える茜だったが、やがて相手は無音で応えるばかりとなった。 優は思わずフェンスに掴みかかろうとして、高圧電流の事を思い出し踏み止まる。 小さく舌打ちをして茜に目をやれば、当の本人はカーゴパンツのポケットからホルダーごとナイフを取り出していた。 まさかそれでフェンスを破壊するつもりか―― 『ああごめん、ちょっと僕と代わって』 茜がナイフを抜く直前、スピーカーから男性のものと思われる音声が流れた。一人称を『僕』と呼ぶあたり、男性というより少年だろうか。 二人への対応を守衛と交代したと思われる男は、柔らかい口調で茜に話しかける。
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