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「とりあえず助かったわね……じゃあ先へ行きましょう」
優の肩をポンと叩いて茜はゲートの先へと進み、優は正直肩透かしを食らった気分のまま、その後を追っていく。
いや、実際のところ肩透かしに思えただけだ。茜は強行突入寸前だったのだから。
翠という人物の介入がなければ過激な不法侵入劇になっていただろう。茜も「助かった」と言っているし、彼の裁量があってこその幸運だ。
ならば、恐らく独断で二人の処遇を覆した『翠』という人物は一体何者なのだろうか……。
後ろの方でゲートが音を立てて閉まる。どこか檻に閉じ込められたような気分に襲われながら、優はベルトにナイフを固定している茜へといくつか湧いた疑問をぶつけた。
「なぁ、あの『翠』って奴は何者だ?」
腰の両側に一本ずつナイフを固定した茜は、周りをキョロキョロと軽く警戒しながら、
「翠はわたしの双子の兄よ。性別は違うから、もちろん二卵生だけど」
「双子……そう、双子なのか」
『双子』という単語を聞いて、優は弟の帝を思い出し苦虫を噛んだような顔をした。
今でこそ自分の非――無能を全面的に自覚しているが、嫉妬という名の逆恨みはそれでも根強くこびりついて離れない。
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