転ノ章6 いざ、九条会へ

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「……とにかく鳶沢の兄貴のお陰で助かったな。何だよ、親身になってくれる奴もいるじゃん」 少なくとも翠の態度に邪険な部分は見られなかった様に思う。案外茜を排他的に扱っていたのは母親と周囲の一部だけなのではないか? しかし茜は首を横に振る。 「それは違う。翠は氷室がいるから敷地内に通しただけだよ。わたしはそのついで。翠の気まぐれだよ」 「俺がいるから? ……そういや何か俺のこと知ってるような口ぶりだったな。どっかで会ってんのか、もしかして」 「顔を合わせたらきっとわかるよ……嫌な思いさせるかもしれないけど」 嫌な思いとは何だろうか。優の中に『あきら』という名前の人物の記憶は思い当たらない。 そのへんも顔を合わせればわかることか、と優はこれ以上掘り下げる事を止め、「なるほど」と返すだけに留めて次の質問を飛ばす。 「『九条』ってのが鳶沢の本姓なのか?」 「……ええ、本名は『九条茜』。今は父方の旧姓である鳶沢を名乗らされてる。うちは女系一族だから、基本的に婿養子をとっていて――」 茜の返答を要約すると、なんでも九条一族は不思議と代々、基本的には女児しか産まれないらしい。 そのため幼い頃から訓練を積んだ一族の女が本家の仕事に従事し、婿は分家の経営する企業に就いて一族を陰からサポートするのだという。
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