転ノ章6 いざ、九条会へ

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優は首をコキコキと鳴らし、改めて周囲に目を向ける。 「それにしても豪華な家だよなぁ……。何かいかにも『そっち系』って感じ」 『人を殺す』素質が必要な家庭環境――その情報から抱いた先入観から、優は九条家が893な稼業で生計を立てていると思い込んでいる。 ここで下手をこけば九隠山の山中に埋められるか、簀巻きにされて居良川に流されるか、はたまたハッピーになるおクスリの持ち運びツアーに強制参加させられるか……。 当然強い覚悟を持って挑みには来たが、いざその時を目の前にするとやはり緊張する。 私刑に処されるのは構わないが、せめてそれは茜の処遇改善と引き換えでなくてはならない。無駄死にだけはしないようにと、優は気合を入れるために膝を叩いた。 「氷室が何を想像してるのか大体わかっちゃうけど……そういうのとはちょっと違うよ、うち」 遠くで獅子脅しがコォンと鳴った。 「え、違うの?」 問われた茜は少し困ったような顔で頷いた。そして「わたしから詳しくは言えないけど」と前置きして、 「母体である本家は正式な所からの依頼で業務を請け負っているし、ここ最近は生計の七割くらいが分家の企業の売上利益で成り立ってる。だから見た目や雰囲気からそういう系に思うのも仕方のない事だけど、割と普通だと思うよ」 人殺しが割と普通なわけないだろ! と優は内心でツッコミつつ「そういうもんか」というだけに留まる。何故なら翠が言っていた『頭首は防衛庁への招集から』という部分があるからだ。 当然詳しくはわからないから想像に頼る部分ではあるが……つまり母体である九条本家は、国からの依頼で人殺しを――。
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