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九条会頭首、九条柳の態度が多少軟化し、ようやく茜と優の二人は対話ができる状況を手に入れた。
九条会そのものについてや自分の父親の名前が出てきた事など、色々と気になる点は山積している。
――けれど、一番優先すべき事は自分の疑問を晴らす事ではない。
自分が一体ここに何をしに来たのか、何を変えたくてこの場に着いているのか。
相手がこうして対話する意思を見せてくれている今、この訪れた好機を逃す手はない――九条柳と交差する視線からふと外れ、優はちらりと茜に目配せする。
茜は小さく顎を引き、居住まいを正して九条柳に向き直った。
「……頭首。お久しぶりですね」
「……」
「突然の来訪、驚かれた事と思います。そして身の程も知らずに本家の敷居を跨いだ無礼、併せて謝罪致します」
「……」
「何よりわたしたちと同じ目線に座して頂けた事に感謝致します。して、今回頭首に面会を求めさせて頂いた理由……ですが……」
「……」
「理由……は……」
「氷室の息子、そう堅くなるでない。楽な姿勢で構わんぞ」
「……ッ」
「しかし伴侶を持つとは聞いていたが、子宝に恵まれていたとは知らなんだ。彼奴め、旧知の仲なのだから連絡のひとつでも寄越せばいいものを」
「……母さん……ッ」
「まあしかし、それらも子を思えばなのかもしれんな。真っ当ではない裏側なんぞ遠ざけておきたいという親心、か」
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