転ノ章7 突き放す理由

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九条会頭首、九条柳の態度が多少軟化し、ようやく茜と優の二人は対話ができる状況を手に入れた。 九条会そのものについてや自分の父親の名前が出てきた事など、色々と気になる点は山積している。 ――けれど、一番優先すべき事は自分の疑問を晴らす事ではない。 自分が一体ここに何をしに来たのか、何を変えたくてこの場に着いているのか。 相手がこうして対話する意思を見せてくれている今、この訪れた好機を逃す手はない――九条柳と交差する視線からふと外れ、優はちらりと茜に目配せする。 茜は小さく顎を引き、居住まいを正して九条柳に向き直った。 「……頭首。お久しぶりですね」 「……」 「突然の来訪、驚かれた事と思います。そして身の程も知らずに本家の敷居を跨いだ無礼、併せて謝罪致します」 「……」 「何よりわたしたちと同じ目線に座して頂けた事に感謝致します。して、今回頭首に面会を求めさせて頂いた理由……ですが……」 「……」 「理由……は……」 「氷室の息子、そう堅くなるでない。楽な姿勢で構わんぞ」 「……ッ」 「しかし伴侶を持つとは聞いていたが、子宝に恵まれていたとは知らなんだ。彼奴め、旧知の仲なのだから連絡のひとつでも寄越せばいいものを」 「……母さん……ッ」 「まあしかし、それらも子を思えばなのかもしれんな。真っ当ではない裏側なんぞ遠ざけておきたいという親心、か」
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