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「また、って……森沢ってモテるん?」 意外そうに聞く谷口に、今西は身を乗り出す。 「知らんの? あ、谷口は今年初めて一緒のクラスになったんやったな。今年の東稜祭見ててみ? ビビるぞ。1年の時なんか、どんだけこいつ目当ての女子がきたか」 「そんなの、いない」 今西の言葉に否定の言葉をかぶせながら、内心で呟いた。 ……去年は。 そういえばこいつとは、1年の時に同じクラスだったか。無粋な今西の話に、封印していた過去が頭をよぎる。 最悪だった1年の文化祭。見知らぬ女子の大群に取り囲まれて写真を撮られた時は、見せ物じゃないと叫びそうになった。 あの時に「京トラムで見かけてました」と言われたのが、チャリ通に切り替える最大要因になった。 2年の時は徹底して裏方仕事に徹したこととチャリ通が効を奏したのか、同様の事態は降りかかってこなくて、ホッとした。 「へえ。だから森沢はいつも余裕な感じなんか」 ……余裕? 谷口の返しに引っ掛かりを覚える。 そんなふうに言われるのは初めてではない。 落ち着いている、大人びている。 自分ではそう思わないのに、周りの評価はそういったあたりで一定している。 自己と他者の評価の乖離(かいり)の違和感は拭えないものの、いちいち否定して回るのも面倒だから黙っているうちに、いつしかそれで固定してしまった感すらある。
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