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この人に対しては、距離を置こうとする自分と、気になってつっかかる大人げない自分の両方がいるのを自覚している。
しばらくして「……未成年が大人の恋愛事情に口を突っ込むものじゃありません」とぼそぼそいう声が聞こえた。
何が恋愛だよ。
相手から向けられる好意をむげにできないとか、その相手が茶の湯に全く関心がないことに安心するとか、大方そういうところで始まった関係にしか見えなかったじゃないか。
それって、恋愛なのか。
どうやらこの人は藤野恭敬という個人より、「藤野流の嫡子」という肩書で見られているという思いが強いらしい。
そういう部分も確かにあるだろうけれど、少なくとも身近な人間はそうじゃないのに。
恭敬さんが自分の背景にただ胡坐をかいているような人だったら、もっときっぱりと距離を置けている。
それをこの人はわかっていない。
「そんな未成年に頼み事する大人に言われたくない」
口に出せないいらだちも含めて、そう言い返しておいた。
ついでに、捨て台詞まで吐いて電話を切ってしまった。
「これからは無駄にお茶がどうのって言わないで、自分に合った人選びなよ」
――こんなことをする自分の大人げなさも、腹立たしい。
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