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今日もまた、つまらない1日が始まる。
「夕ー?そろそろ起きないと……」
「大丈夫、起きてる」
あたしはドアをノックする母さんにそう答えると、ベッドから起き出した。
腰まで伸ばしたからか寝癖もつかない、自慢の髪を手櫛で梳いて欠伸をひとつ。
寝間着のだぼっとしたTシャツのまま、部屋から出て洗面所へ行くと、兄(5歳年上、シスコン)とかち合った。
「やあおはよう夕、眠そうな顔も可愛いね。でも今日も急ぐんだろう?早く顔を洗っておいで」
「おはよう、目腐ってるんじゃないの?」
酷い事を言っているようだが、兄への対応はこれでいいのだ。下手に普通に接すると舞い上がって非常にうざったい事になる。
「洗面所、使っていい?」
先祖返りだか何だかで家族で唯一瞳の色が蒼い兄を見上げると、兄はニッコリ笑った。
「僕は今使い終わったところだからね。どうぞ」
「はいはいどうも」
髪を縛って顔を洗い、タオルで拭いながらふと鏡の中の顔を見つめる。
詳しくは知らないが、どこか遠くで白人の血が混じっているらしく、あたし達家族は少し異国風の顔立ちだ。
と言っても父母はほぼ日本人の顔で、兄はハーフに見えるくらいだと思う。
あたしはその中間くらいで、自分ではそこそこ良い器量を持って生まれてきたと思っている。
まあ彼氏が出来たことはこの16年で1度も無いし、とある事情から唯一と言っていい友人に、褒められるだけだから実際は中の中とか中の下なのかも。
両親も兄も文句無しの美形だけに悔しいけど。
「……人は顔じゃないわよね」
「うん、そう思うよ。ただ夕が言うと嫌味になっちゃうけどね」
とっくにいなくなっていたと思っていた兄からの返答に、あたしはタオルを投げつけた。
「うっさい馬鹿兄貴、独り言よひ・と・り・ご・と!」
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