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「アヤセ……テメエ……」
「え?おこ?おこなの?全帝さんおこ??」
「……」
「いだ、あだだただ」
無言で頭を鷲掴みにされてギリギリと力を込められた。
「……はぁ。身体強化掛けてんのになんでケロッとしてんだよ」
「いや、女の子になんて仕打ちをしてんですか」
「仲いーな、おめーら」
「これが仲良しに見えるなら祈祷院に行く事を勧めるぞ、風帝」
「ひっどーい。あたしはこーんなに全帝さんが大好きなのにー」
「……タチの悪い冗談だ」
「ひどっ!?」
* * *
「明日は臨海学校だろ?そろそろ止めにしようぜ」
という雷帝の言葉で、俺達はぞろぞろと不思議空間を出て、アヤセの魔法で身体に魂を戻した。
「おい、全帝、風帝、炎帝、地帝のじっちゃん、風呂入ろうぜ!あの浸かる風呂最高だよな!」
「いーぜー」
「そうじゃの、あの風呂は老骨に染み渡るわい」
「ああ」
「いいよ」
何十年と共に過ごしたが、カルヴァーン達に正体を明かすのはさすがにまずいだろうという結論に達し、俺達は未だにあいつらがいる場所ではフードを被っている。
当然風呂も別々だ。
「ぶはー!湯に浸かるって何で誰も思いつかなかったんだろうな!」
広い浴場に雷帝の声が響く。
「ユウちゃんの故郷…異世界の文化らしいが、気持ちええもんじゃのう」
異世界。
そうだ、アヤセとカミヤは異世界の住民だった。しかし、疑問がある。
なぜアヤセは吸血鬼なのか。聞いたところによるとアヤセ達のいた世界は魔法もなく魔物も魔族もいないはず。それなのになぜ吸血鬼なのか。
「……ところで全帝、いやイルト」
「……何だ?」
炎帝の声で没頭していた思考から引き戻される。
「君、ユウちゃんと仲いいよね?」
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