3765人が本棚に入れています
本棚に追加
/449ページ
『夕、今暇でしょ?』
唐突に邪神がそんな事を言った。
(別に暇じゃないわよ。鍛錬してるじゃない)
あたしは邪神と内心で対話しながら、流れる汗を拭った。
臨海学校は何日か前に終わり、もう夏休みの予定はない。なので涼しくしたこの空間に入り浸って鍛錬するか、ギルドで帝達向けの依頼を一気に受けるか、という生活をしている。
お陰で《魔神》の名は知らない者がいない程の知名度を誇る、らしい。
今はルシファーとセラフィム相手に神力を使う練習をしているところだ。
この2人、仲がいいだけあってコンビネーションは抜群なので、かなり厳しい戦いである。
「ほら夕ちゃん!会話してる暇はないぜ!」
セラフィムが神力の塊を撃ち出してきたので、咄嗟に魔力で壁を作るも、すり抜けて直撃する。
「夕、復唱しろ。『神力の攻撃は神力でしか防げない』」
「『神力の攻撃は神力でしか防げない』」
「咄嗟の反応を取ろうとするとお前は忘れるから注意しろ」
「はーい」
そして神力の傷は神力でしか癒せない。
あたしは腹に空いた大穴を神力で治癒しながら、寄ってきたセラフィムとルシファーを見上げる。
「でもま、ちょっと根詰めすぎかな?今日はのんびりするのもいいかもな」
『じゃあさ、ボクに身体貸してよ!』
「許可するわけねーだろ」
『食べ歩くだけだから~!』
「まあいいんじゃない?1日くらいなら」
普通の人には声が聴こえない邪神の言葉を軸に会話しているので、傍から聞いたら意味が分からないだろう。
現に会話が聴こえてたらしい雷帝が首を捻ってるし。
『夕もこう言ってるし!決まりね!今日1日はボクの日だ!』
「勝手にしろよもう……」
ルシファーが頭が痛そうに首を振った。
最初のコメントを投稿しよう!