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「【ライトチェーン】!」
突然、ボクの身体がぐるぐる巻きにされた。
『ルテ、この場を離れて』
『はいよ』
魔法を放ってきた人物を見て、いち早く状況を理解した夕は魔王を巻き込まない為だろう、別行動を指示した。
素直に去りゆく背中を眺めていたら、術者である金髪の女がこちらを睨みつけてきた。
「僅かだが邪気を感じる……貴様、何者だ!」
『あら、邪気が分かるなんて意外とやるのね、近衛騎士団長』
ふーん。この人近衛騎士団長なんだ。
「だんまりか……ひとまず貴様を連行する!」
あーあ、楽しかった食い倒れツアーももう終わりかぁ。まだ一番楽しみにしてたチョコ食べてないんだけどな。
『後で解放されたらチョコレート専門店にでも行きましょ』
(うん!)
鎖を乱暴に引っ張られながら、ボクは近衛騎士団長の後ろを歩く。
この人、邪気を感知したまではよかったけどボクの口も塞がないで、魔法とかで攻撃されたらどうするつもりなんだろうね。
「入れ」
ドン、と背中を押されて入れられたのは、牢だった。
「え~、ボク何もしてないのに牢に入れられるの?」
「黙れ。邪気を放っている時点で罪人も同然だろう」
今、ボクの存在自体が罪人みたいな言い方したよね?
さすがに傷つくよ?
(めんどくさいなあ、殺しちゃおうかなぁ)
『こらえて、邪神。この人を殺すと厄介な事になるから』
(夕に迷惑は掛けられないからね。冗談さ)
少し、本気だったけどね。
「手を出せ」
両手を揃えて差し出すと、魔封じの手錠がガシャンと掛けられた。
「騒ぎを起こすなよ」
そう言い捨てて去っていく近衛騎士団長の背中を見送りながら、ボクは呟く。
「暇だなあ……」
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