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固いベッドに腰掛けて足をぶらぶらと揺らしていることしばらく、再び近衛騎士団長のものと、あと知らない足音が聴こえてきた。
「こちらになります、闇帝」
「……確かに邪気ね」
近衛騎士団長と共に現れたのは、ボクが着ているものと同じ色の紺色のローブを纏い、フードを深く被った女だった。
「でも知り合いの気配と混ざってるわ……まさか」
「お知り合いですか?」
「確信を持てないのよね」
落ち着いた口調に僅かに緊張を滲ませた女は、フード越しにじっとボクを見ている。顔を見透かそうとするように。
「……あのさ」
ボクが口を開くと、女は息を呑んだ。
「ボクが何かした?何もしてないよね?こんなカビ臭い所に閉じ込めておこうっていうならこっちにも考えがあるよ」
「フン、魔封じをされて何が出来ると?」
近衛騎士団長が馬鹿にしたように鼻で笑う。
「こんなガラクタ、外そうと思えば一瞬なんだよねぇ」
「待っ……」
女の制止の声を無視して、力づくで手錠を砕く。
手錠はパキン音を立てて、呆気なく手首から離れた。
「魔封じの手錠を……砕いただと?」
「ボクがその気になればこの国を消す事だって出来るんだ。面倒だからやらないだけで。めんどくさくなってこの国を消したくなる前に出してくれない?」
『お馬鹿ね、邪神。そんな事言ったら逆効果よ』
(え、そうかな?)
『少なくともあたしならここで消さなきゃって気持ちになるわね』
ボクの言葉を聞いた近衛騎士団長と女は固まった。
「邪気を持つ人間は邪神に取り憑かれているというわ……その人の命を何とも思っていない発言といい、やはりあなた…邪神ね」
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