第24章 ラジェル家の事情

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結局渋る全帝を強引に頷かせて、あたしはラジェル家があるシルへ村に向かう事にした。 【ゲート】で、シルへ村近くに移動してから村に行くと、何とものどかな様子だった。 だが結託して全帝を追い出したという話を聞いている身からすると、素直にこの穏やかな光景を甘受できない。 「お姉さん、だあれ?」 不意に幼い少年に声を掛けられ、立ち止まる。 「ギルドの者なんだけど、ラジェルさんのお宅に用があるの」 「そうなの?それ僕んちだよ!連れてってあげる!」 「ありがとう」 ならこの少年は全帝の弟か。 全帝は知ってるのかな、弟がいる事を。 少年は、村の一番奥の小さめな屋敷の前まで行き、そのまま駆け込んだ。 「おとーさん!おかーさん!お客さんだよ!ギルドの人!」 入口の前で突っ立っていたら、バタバタと足音がして息を切らした女性が現れた。 ……目が赤い。全帝の目は母親譲りか。 「ギルドの方ですか!どうぞこちらに!」 「はい」 息を整えた女性はあたしをとある一室に案内すると、「少しお待ちください」と言って紅茶を出し、小走りで立ち去った。 それからいくらも待たず、女性は同年代の男性を連れて現れた。 その男性を見て、ひと目で気付く。 あ、全帝の父親だ。顔立ちが似てる。 全帝を老けさせてちょっと平凡な顔にしたらこんな顔になるだろう。 母親の方も美人っちゃ美人だけど、あの全帝の恐ろしいまでに整った顔は誰からの遺伝なんだろう、生命の神秘だね。 「《暁の光》ギルド員のSSランク、《魔導》と申します。こちらの依頼を出されたという事でよろしいでしょうか」 淡々と依頼書を取り出し、テーブルに滑らせると2人が頷く。
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