第24章 ラジェル家の事情

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今度は少年と会う事もなく、屋敷に着いた。 ひとまず全帝を外に待たせて来訪を知らせると、慌てて夫人が出て来る。 ……前から思ってたんだけど、使用人とかいないのかな。下級でも貴族だろうに。 「《魔導》様!あの、依頼は……」 「連れて来ました。……イルトさん」 全帝は全くの無表情で、ゆったりと歩み寄ってくる。 え、何、怖っ!その顔怖いですよ! 「あ…ああ……」 いかにも“寄るな”オーラを出している全帝だが、夫人は口元に手を当てて涙を浮かべ、感極まった様子だ。 「……中に通していただけます?」 「はい……はい…!」 あ、ちょっと泣いてる。 全帝は…? ああ…うんざりした顔を隠そうともしてない……。 こりゃ前途多難ですね。 「彼がイルト・ラジェルです。お探しの人物で間違いありませんでしょうか」 「間違いありません!我々の息子です!」 サンクさんも目を潤ませながらイルトを見る。 チラリと横目で全帝を見ると、能面のような真顔である。その顔からは感動は1ミクロンも感じ取れない。 「……イルト?」 ようやく全帝の様子に気付いた夫人が怪訝そうな声を掛ける。 「俺はあんた達の息子なんかじゃない」 「え…?」 夫妻は何を言われたのか分からないという様子で、ポカンと呆けた。 「捨てたくせに今更何の用だ?」 試合開始のゴングが鳴り響きました。
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