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「……」
無言の全帝に、あたしは声を掛ける。
「イルトさん、会える場所に家族がいるのなら、後悔しないようにした方が絶対いいです。無理強いはしませんけどね」
「後悔しないように…か」
全帝が僅かに哀れみの籠った目であたしを見下ろす。
あたしの境遇を思い出しているんだろうが、哀れまれる謂れはありませんよ。
そりゃもっと親孝行しておけばよかったとか後悔だらけだけどさ。
「……俺は忙しいから早々会いに来れない」
「ならばこちらから行く!」
「あ、イルトさんはイノリア学園に在籍してますよ。あたしから学園長に話を通しておくので、会いたかったら会いに来てくださいね」
「お、おいアヤセ……」
「ありがとうございます、《魔導》様……」
サンクさんとティアさんは深くあたしに頭を下げた。
うん、一件落着かな。
後日、ティアさんが全帝の元を訪ねる際に弟のシエラ君を連れて行った事でまたひと騒動あったのは余談。
全帝は幼いシエラ君の手前、怒鳴りはしなかったらしいけれど、あたしと会った時にめっちゃ愚痴られました。
それをすごいニヤけながら見てきた会長とニーナ先輩は謎だけど。
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