第2章 月夜見の実力と追っ手

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緊迫した空気が辺りを埋め尽くすかに思われたとき、事態は動いた。 追っ手のうちの2人が此方に走り込んできたのだ。 僕は愛刀を鞘から抜き出し、その艶やかな刀身を追っ手に差し向けた。 鞘は落ち着いた瞳の色と同じ紺桔梗。 赤く色付いた美しく輝く刀身は細く、その形は日本刀そのものだった。 名を舞斬華(マイザンカ)。 僕専用に作られた最高の一品だ。 まあ…此れをくれたのは両親ではないが。 半身で前を向き、中腰の姿勢で低く鋭く構え、攻撃に備えた。 慶兄も腰に差した鞘から一本の剣を取り出した。 鞘は鈍く光る燻銀。 重厚感ある独特なカーブは狼の遠吠えの姿を思わせる。 銀色に輝く刀身は目に眩しく、薄く少し触れただけで斬れそうな程鋭い。 名を銀刄狼(ギンバロウ)。 慶兄の騎士団入団祝いに父より授けられた業物だ。 スッと立ち、左手1本で敵に剣先を向ける姿は宛ら騎士だ。だが、隙の無さから同時に相当な熟練者である事を示していた。 向日葵は太股に巻き付いたバンドから短剣二本を取り出した。 エメラルドグリーンに煌めく刀身は薄く鋭く、深緑の紋様が刻まれ、全体的に軽量化されている。 紋様は魔法の通電路だ。 名を翠迅双(スイジンソウ)。 向日葵の5歳の誕生日に父より授かりし業物だ。 素早く敵の死角に成る程低く構えた。 気配はまるで無く、背後を取られたら終わり…という雰囲気を纏っていた。
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