第2章 月夜見の実力と追っ手

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端から見ればヤバい僕らに対する、追っ手からの反応はかなり単調なものばかりだった。 「バ、バケモンだ!」 怯えるやつ。 「こうなったら弱そうなチビ狙うしかねーだろ!」 ヤケになるやつ。 「そうだな…女みてーな名前だし。もしかして本当に女なんじゃね?」 馬鹿にするやつ。 ギャハハハハハ… 雑魚っぽさ丸出しの下品な笑い声。 こんな奴らばかりじゃないか。 狭い世界は闇しかこの目にウツサナイ。 …広い世界に行けば、こんな闇は消えてしまうのだろうか。 どちらにせよ、こんなのは希望観念に過ぎないのだ。 「…これ以上、この世界に絶望させないでもらえるかな。」 そう小さく呟く。 辺りの空気が重く変わっていく。 ヒューーと、低く響くような風が吹く。 しかし、追っ手達は気づかず喋る。 「は?聞こえねーよ?あ、分かった!命乞いでもしてんだろ?」 「…黙れ。」 低く冷たい感情のない言葉。 さっきまでとは何だか違う雰囲気に追っ手達の頭の中では警戒音が鳴り響く。 「…お前は一体何者だ?」 勇気ある1人が問う。 「…葉宵(はよい)。…対象確認、消去する。」 感情がまるで感じられない声。 だが、この場の者を惹きつけたのは変色した瞳。 元の瞳は闇夜のような紺桔梗(こんききょう)。その色の瞳はどんな宝石よりも美しかった。 だが今の瞳は、無感情で両手を血で真っ赤に濡らす、壊れた人形のような…朱殷(しゅあん)だった。 その色は、昔から人の血を表すために用いられてきた。 さて、これを理解出来た者は、一体何名いたのだろうか? 殺戮を連想させる色が目の前にある事の意味を。 瞳の中に『希望』の光はない。 ただ機械的な…純粋なる殺意が宿っていた。 殺意そのものが存在していると言っても過言じゃない程に、濃密で圧倒的な殺意。 それに当てられ、全く動けない対象を、糸で縫い上げるように少ない回転数と動作で切り捨てる。 後には、唯の肉片しか残っていない。 あまりの早さに飛び散った血が花のように空間を彩る。斬る姿は舞う様にしなやかで美しい。 周りにはそう見えてしまうのだ、残酷なまでに華麗な消去行為は。 愛刀、舞斬華の由来は此処から来ている。 勿論、チビ・女言った奴は木っ端微塵にした。 自業自得だし、雑魚キャラ感満載だったんだよ。 ちなみに、葉宵モード時の思考は、完全にならない限り僕のままだ。
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