第2章 月夜見の実力と追っ手

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チッ…また出てきた、それも2人。 僕に対する軽蔑の視線付き。 それも複雑さを滲ませた、キモチワルイやつ。 …って、何気に挟んできたし。 相手に動きは…無いな。 time limitまで時間がないというのに。 完全な葉宵になりたくないんだけど。 さっきの糸流斬(シリュウザン)だって、あれ以上のスピードで動けば、慶兄や向日葵を巻き込む羽目になる。 元々、糸流斬は並の人間では風が吹いたという認識しか出来ないほどの速さで動き、敵を抹殺する暗殺術。 そんなもの一度でも喰らえば、即死或いは手傷を負う事になる。 この殺気に当たっても、動揺すらない。 おそらく、かなりの手練れなんだろう。 って事は、他の奴らは数で足止めする捨て駒ってところか。 でなきゃ、裏山の結界なんて破れる訳がない。 …内部に協力者がいるなら話は別だが。 はあ…面倒な奴が相手みたいだ。 ま、成るように成れ、だな。 おっと、その前に… 「慶兄、向日葵。早く祠へ。俺が殺られたら…慶兄頼んだ。」 視線と気を逸らさずに声をかけた。 こうでもしないと、2人の安全は保証出来ない。 祠が開かずとも、攻撃圏内から離れてもらわないと、不味い敵かもしれないし。 「頼んだって…はあ、分かったよ。向日葵、行くぞ。」 慶兄はスッと向日葵の手を取り、走り出す。 その姿は姫を連れ出す王子様のよう。 ここに白馬があれば完璧だろうに。 「待ってよ、兄様!それでは、兄上が!」 向日葵の抵抗は虚しく、力強く引っ張られ、祠の方へとかけて行った。
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