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~No said~
曇天の中、時より風に揺れる草原に1組の男女が立っていた。
男は金髪に数束のオレンジ色が混じった、紺桔梗の瞳をしている。少年とも青年とも取れる年若い顔と身体。ただ、美しく天使のようと表す他無い容姿だ。
女は月白の髪に眼帯のつけられた右目、左は白縹の瞳をしている。こちらも少女とも青年とも取れる年若い顔と身体。ただ、美しく女神のようと表す他無い容姿である。
男女は互いに空を見上げ、物思いに耽っていた。
暫くして、男の方が徐ろに女の方を向き、その場で跪いた。
女の方は予想だにしていなかったのか、動揺の色を隠せないでいる。
「俺は君に誓う。君を愛し、共にある事を。そして、己が過去を知ろうとも、己の人生を生きる為に、全てを終わらせる事を。」
「この誓いの証として…この髪を切る。」
フッ!
ザクッ…
一息に斬られた髪は、男のものとは思えぬほどに長く、元は1つに束ねられていたものだった。
結び目の根元から斬られ、もう結べぬ程短くなった髪。
風に吹かれ、結えていた紅紐が何処かへと飛んでいく。
靡く髪は相変わらずオレンジ混じりの金色だが、もうそこに女のような色香はなく、ただ勇ましく男らしい力強さと王者の風格が漂っていた。
「…え。何で髪を?誓いならもっと他に…」
目の前の光景に目を見開き、戸惑う女は男の方をじっと見つめている。
「これは俺なりのケジメなんだ。過去の全てを断ち切る為のな。」
それを受けてか、男は少し困ったように、だが、力強い目と意思を持って、そう女に告げた。
「…そう。少し…残念ね。あんなに綺麗だったから。でも…それが冷夏の意思なら、受け入れましょう。その誓いも、冷夏自身も。」
この言葉を聞き、少し伏せられた目も、最後にはしっかりと男の方を見据え、女は誓いを受け入れた。
女は元より男を愛しているのだ。
どのような形であれ、男が望む事は何でもしたいのであろう。
だから敢えて口に出して、誓いと男自身を受け入れた。
「ありがとう。」
女の真っ直ぐで真摯な瞳と返事に、男は照れたように微笑を浮かべた。
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