第8章 逃走と予想外

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…さて。もうそろそろ、潮時だろう。 僕の計算通りに行けば、あと数十秒と言ったところか。 「ふっ…」 10秒前… 「…ん?どうかしたか?」 5秒前… 「いや…何でも。」 3、2、1… 「花宮兵士長ー!!花宮兵士長はおられるか!?」 0! …今のところ、計算通りだな。 「ここだ!」 右手を振りつつ、やってきた部下と思われる者に、向けて声を張り上げた。 よく通る声だったおかげか、すぐに気づき、その者は此方へと駆けてきた。 「…報告します。現時刻より約20分程前、マリリーヤ通り付近の裏路地に面する家屋にて火事が発生しました。」 「マリリーヤ通りか…近いな。」 「はい。ここからですと…10分もかからないかと。」 「そうだな。それで、今のところ他に分かっている事などはあるか。」 「付近の住民の避難は、周辺に空き家が多かった事もあり、既に完了しています。現在、現場では水系の魔法を使える隊員が消火活動にあたっています。ただ…家屋自体は空き家なのですが、木造の為火の回りが早く、早期の鎮火には至っていません。また、その辺りは危険スポットとして、マップにも載っている為、観光客等への影響は最小限になると思われます。」 「詳細な報告、ご苦労だった。俺も今からそっちに向かう。冷夏を寄宿舎に転移で送ってからになるから、君は先に戻っていてくれ。」 「了解しました!」 敬礼後、その者はタタタタ…とそんな効果音が付きそうなほど、足早にその場を去っていった。 「さて…今の話から察してるとは思うが、今から転移で寄宿舎まで強制送還だ。散歩が少し短くなるが…まあ、致し方無いだろう。」 「別に問題ないが…その前にトイレに行かせてくれないか?言うタイミングを逃して、今の今まで我慢していたんだが…限界だ。とてもじゃないが転移に耐えられそうに無い。」 「それは…一大事だな。1番近いトイレはさっきの飴の店の中だ。俺は店の前にいるから、終わったら教えてくれ。」 「…悪いな。」 色んな意味で。
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