家庭科室の乙女

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キブは物心ついた頃から幻を見ていた。 おそらく、もともとは生きていた人間の記憶のカケラ。 ここ旧校舎は、いつもそのカケラ達で賑わっているらしい。 キブはその中でギターを掻き鳴らし、歌を歌うのだった。 少女はいつもオムライスを作っていた。 大根を細かいさいのめに切って、コンソメスープを作る。 鶏もも肉と玉ねぎと人参を刻み、熱く熱したフライパンに油を塗って粗く挽いた胡椒で炒める。 水分が滲み、玉ねぎの色が変わると、ウスターソースを少し流し入れて、フライパンに蓋をする。 火力を弱くして、ごはんを準備する。 キブはその光景を眺めながら、アンプを繋いでいないエレキギターで「おもちゃの兵隊の観兵式」を弾いた。
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