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ある日の日曜日、バイトから帰った私がリビングのソファに座った瞬間
ペンキとコロンとタバコの混ざった……あの、匂いが鼻を通り抜けた。
「……あれ?」
「あずみ……?どうしたの?」
「お母さん……今日、ずっとお家にいた!?」
思わず立ち上がって、キッチンからいそいそと出て来たお母さんに向き直った。
声の調節が出来なくて、つい大きくなる。手が、足が……震えた。
「ええ?今日はお母さん……絵画教室に行ってたわよ?ほら、ご近所の山谷さんが始めたやつ。ずっと前に話したでしょう?」
「……嘘。嘘だ……だったら、どうして……ペンキの匂いが、ここに……」
「ああ……、バレちゃった……?」
声をワントーン落としたお母さんが、ニヤリと怪しく微笑んだ。
「……お母さん……?」
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