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会社帰りの夕方、夕焼けの色は薄くてまだまだ日は長い。
頭の中は、今日の夕飯の事が六割、仕事の事が三割。あとの一割は、まだ見ぬ未来の彼氏への夢とか。
「はぁ、今日もカップ麺かな……」
自炊してるの? と母からよく電話が来る。ひとりならいちいち作るよりも、買った方が安上がりなの、と言い訳をしてやり過ごす。
肩にかけたショルダーバッグの中でカタカタと化粧ポーチが音をたてて、同じタイミングでかかとの低い革靴がコツコツと地面を踏む。
人通りの少ない路地。まだ明るいからいいけど、夜は街灯もない狭く細い道だ。住宅地の隙間を縫うような、まるで猫の散歩道のような。でも私はこんな道が好きだった。
夜は絶対、通らないけど。
ひとつ曲がり角を変えれば、大きな通りがあるのだ。ここは、車も通らない。
頭の中が棚にストックしてあるカップ麺のラインナップを映し出し、味噌か醤油かで絞り込まれる。
ちらつく今日の仕事の嫌だった事を頭の中から追い出すように。
上司の女性は口うるさい年増で、人を見下した目をしている。私に対してだけでなく、新入社員の女の子にもこれだから、新人は一年ともたずにやめていく。
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