嘘……なんて、ない。

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なにより私が信じられなかったのは、マネキンがまるで生きている人間のように動き、電話を通して話しかけてきた事ではなく、私の前世が男だったという事でもない。 前世の私が、とんでもなく私好みの好青年だったからだ。 「どうりで私、彼氏できない訳だわ」 アパートに帰った私は、カップ麺にお湯をそそぎ、五分待つ間に(うどんだから五分)鏡を見つめていた。 数年前の自分は、あんなにかっこよかったのだ。そこらへんの男になびかないのはもう、当然だ。 「私の前世があんなイケメンだったなんて……。今の私が自堕落な生活してちゃダメね。明日からカップ麺やめて、ちゃんとごはん作ろう」 そして前世の私よりもいい人に巡り会えるように、自分を磨いていこう。 ほんの些細なきっかけが、明日からの未来を変えるなんて思いもせず、努力もしてこなかった私。 明日も同じ今日の繰り返しだなんて、もう言わない。 だって私の運命は、今日変わったんだから。 数日後、仕事ぶりまで変わった私を見て上司の年増が呟いた。 「ちょっと……。嘘……でしょ……?」 「いいえ、現実です」 *end*
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