4人が本棚に入れています
本棚に追加
なにより私が信じられなかったのは、マネキンがまるで生きている人間のように動き、電話を通して話しかけてきた事ではなく、私の前世が男だったという事でもない。
前世の私が、とんでもなく私好みの好青年だったからだ。
「どうりで私、彼氏できない訳だわ」
アパートに帰った私は、カップ麺にお湯をそそぎ、五分待つ間に(うどんだから五分)鏡を見つめていた。
数年前の自分は、あんなにかっこよかったのだ。そこらへんの男になびかないのはもう、当然だ。
「私の前世があんなイケメンだったなんて……。今の私が自堕落な生活してちゃダメね。明日からカップ麺やめて、ちゃんとごはん作ろう」
そして前世の私よりもいい人に巡り会えるように、自分を磨いていこう。
ほんの些細なきっかけが、明日からの未来を変えるなんて思いもせず、努力もしてこなかった私。
明日も同じ今日の繰り返しだなんて、もう言わない。
だって私の運命は、今日変わったんだから。
数日後、仕事ぶりまで変わった私を見て上司の年増が呟いた。
「ちょっと……。嘘……でしょ……?」
「いいえ、現実です」
*end*
最初のコメントを投稿しよう!