来栖妃那編 《どこ行った?》

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「恭子は国に帰ったよ」 「国?あいつ、日本人じゃないのか?」 --- うっそ! てっきりと日本人だとばかり・・・ 「ばぁーたれぃ! 国っちゃ東京のこったい!」 「東京・・・・。ああ方言か」 さっきからマサヨ婆は島弁を使うから 意味を理解するのに時間がかかっちまう。 それどころじゃなかった! 「えぇぇぇっ!東京に帰った?なんでっ!」 「もともと曰くありげだったな。 泉田のせがれが連れて来た時も どう見ても姪っ子に使う言葉使いじゃなかった」 「・・・・・・・」 あの子が偽名を使っていたことは 俺もつかんでいた。 どこかの金持ち出身なんだってことも。 名前が分からない以上、調べられないが 着ていたドレス、宝飾品はどれも高価なもの。 実際に俺の手で1つずつ外したんだ。 偽物か本物か。 安物か高額か。 俺にも見分けがつくくらいな代物だった。 「帰るのは決まってたことなんですか?」 「いいんや。ガタイのいい男にな 連れて行かれるのを見たった」 首を左右に振って、 情けなさげに言うマサヨ婆。 「それっていつのことだ?」 「クリスマスの日じゃよ。 恭子がバイト終わるのを待っとったな。 家に入るなり、すぐに車に押し込まれとった」 もう一度、首を左右に振って 今度は泣きそうな顔を俺に向けた。
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