来栖妃那編 《どこ行った?》

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・・・・・・・・・・・・ 年が明けた。 あっという間の仕事始めの日の朝。 ガチャッと 開けられた扉から入ってきたのは中田。 「あけましておめでとうございます?」 笑顔で勢いよく挨拶をしながら入ってきたが 中田の語尾が上がった。 「・・・・・・社長?」 社長室で座っている俺の様子を見て 怪訝そうな顔でこっちを見ている。 「どうか、・・・・されましたか?」 俺の正面に立って、顔の前で手を振ってる。 いつもは運転手が迎えに来て 社屋の玄関で中田は出迎えるのが通例。 それが、今朝は中田よりも先に来ていた。 仕事をやる気になったと思ったのだろうか。 嬉しそうに社長室に入ってきたが その俺の様子が見違えるほどだった。 「社長?ちゃんと食事はされてますか?」 げっそりした俺の顔を覗き込む中田に 「・・・・・・・彼女がいなくなった」 ボソッと。 聞き取れたかどうかくらいの 本当に小さな声で囁いた。 「彼女?あの島の弁当屋の彼女ですか?」 「ああ。行ったら家はカギ詰めだったし 弁当屋にも新しい子が入ったらしい・・・はぁ」 めり込むぐらいに頭を下げて項垂れ 見るも無残な姿・・・
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