2973人が本棚に入れています
本棚に追加
/3000ページ
________________
_____________
__________
「妃那ちゃん!あなた
そんな格好で行くの?」
階段から降りてきた私に詰め寄る母に
「行くわよ。いいでしょ?」
平然と言い切って、その横を素通りし
唖然とした顔で私を見送る母を残して
使用人が開けてくれた玄関から外に出た。
今日は私の見合いの日。
結婚が確定している、形だけのお見合い。
結局相手の写真も釣書も
何も確かめずに今日を迎えた。
見る気にもなれない。
写っているのは常習犯じゃないもの。
あの人が写ってるんだったら
棚の上にでも飾っておくわよ。
「おはようございます妃那さま」
運転手が後部座席の扉を開けて待ってる。
「おはよう。お願いします」
挨拶を返してから後ろに乗り込めば
「お待ちくださいよ妃那さま!」
あとから慌てて泉田が乗り込んできた。
「何をしに来たの?」
顔も見ずに問いかければ
「私も同行いたしますので・・・」
見張り役だろう。
父は先に会社に寄ってから料亭に来ると言う。
その父については行かずに
私に付きっ切りで逃げないように見張るため。
最初のコメントを投稿しよう!