島田恭子編 《キョウダイ》

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車の中から見ていると 部屋の中にも入って行ったようだ。 甘えちゃえって言われても 今まで甘えられる環境じゃなかった。 私がしっかりしないと このうちは成り立って行かなかったから。 そんな環境で育ってくれば 自分の父親にだってすんなりと甘えられない。 どんなにも泣き言吐きたい状況の時だって 歯を食い縛って生きて来た。 そんな境遇で育った私に 今更人に甘えろとは非情なり・・・ 「逃げずに待ってたな」 オニが戻ってきた。 「どこに逃げるんですか。 逃げる先に鬼藤さんがいるのに」 「はは。そうだな。 じゃあちょっとそこらへん走るぞ」 エンジンをかけた車がまた走り出した。 ご自分のテリトリー内だからか ナビも見ずに運転している。 目指す先が決まっているようだ。
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