石橋花菜編 《引っ越し》

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「あのね、由梨ちゃんにお願いがあるの」 『私に?なあに?』 無邪気に聞いてくれる姪っ子に 「私が頼るのも申し訳ないんだけど あなたの実家にしばらく置いて欲しいの」 『何言ってんのよ! 花菜ちゃんの実家でしょ! なんで私にお伺いを立てるの? 堂々と実家に出戻ればいいじゃない!』 怒って言う姪っ子。 「そうなんだけどさ。 私は・・・・」 『血が通っていなくても私のおばちゃん! 花菜ちゃんは石橋の姓でしょ?』 「・・・・・・そうだったね」 そう言ってくれたことがうれしくて 涙声で返事をすると 『何かあったんでしょ? 別に無理に訊き出そうとは思わない。 話したくなったら話してくれれば』 「うん」 『あの実家だって空き家だし 気兼ねしないで住みなよ。 私も今度休みになったら顔を見に行くから』 「うん、うん、ありがとう由梨ちゃん」 まさか、姪っ子に泣かされるとは。 あんなにひどいことをされても 一粒も涙を流さなかったのに・・・・・・
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