石橋花菜編 《引っ越し》

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「あ、あの!」 大きな声で作業を止めた。 じゃないと、この人、 全部のイスを下ろしていきそうだ。 ん?って顔で私を見るから 「ここ、まだ掃除していないんで。 中で。中でいただきますから」 テーブルの上に乗ったお皿を持ち上げ 視線を自宅のある奥に向けて告げると 「そう?んー、そうだね」 まだ手付かずな状態なのを理解したのか 持ったままだったイスを置いた。 「ありがとうございます。 遠慮なくいただきますので」 遠回しに「もう帰って」という意味で告げると 「じゃあ・・・・俺は行くね」 意味を理解してくれたのか 単なる偶然か、そう言い残して戻って行った。 彼が道を渡ったところまで見届けてから お店の扉のカギをかけた。 今度はお風呂でも入りにおいで、って そう声をかけて来そうだったから。
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