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私が先輩にダメ男の烙印を押す、決定的な出来事があった。
「あ、Bとゆうちゃんは俺の左側ねー。今日の俺は、こっちがいいからー」
と言って、先輩は横顔の左半分を示した。
右側にちーーーっさなニキビができたから、だそうで。
先輩のなかでは、常にかっこいい部分だけを見てほしいらしい。
そんな先輩に、私はすでに嫌気がさしていた。
でも、Bさんと付き合ってしまった手前、その友達である先輩をないがしろにもできず。
「ってか、お前いつまで一緒にいるの?ゆうと二人にしよう、とか気遣いないよなー」
正直ウンザリしていたのか、Bさんからの遠回しに((頼むから、どっか行って……))アピール。
「俺も彼女作ればいいんだろ?けどさ、俺以下の顔面偏差値はさー……」
と、持論を並べはじめる始末。
こういうのを、手のつけようがないとか言うんだろうな……
「ほら、美男には美女が当たり前ってゆーか?」
な・ぐ・り・た・い☆
訴えるようにBさんを見やると、苦笑いだけ返ってきた。
Bさんからすると、毎度のことなのだろう。
電車の窓から夕陽が差し込む。
先輩の横顔は、鮮やかなオレンジ色に染まる。
右側の小さなニキビの存在さえわからないほどに。
「ゆうちゃんは俺に惚れたらダメだよ?」
「あ、ないです。絶対に」
その瞬間、先輩の笑顔が凍りついた。
しまった!と思ったのもつかの間。
一度毒を吐いてしまった今の私に残されたのは
①その場を取り繕う
②吐露する
のみ。
隣に立つBさんが握りしめた手に、更に力をこめた。
俺がフォローするから。
そんな気がして。
私は迷わず選ぶ。
「先輩って、見た目だけで中身空っぽですよね。むしろ、その自分が一番とかいう価値観捨てれば?って思うし」
毒を吐かせていただきます。
「先輩の高校では、かっこいい部類かも知れないですけど。先輩の周りの女の子は、ただのミーハーですよね?興味本意レベルってことですよ、所詮」
「モテてると思ってるかも知れないですけど、違いますよ?」
「中身は自分大好きな甘ちゃんだから。先輩は人間と付き合うより、ずっと大好きな鏡といれば周りの迷惑にならないと思います☆」
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