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「姫っ、やりました。成功しましたぞ」
「そのようね。真駒のおかげで命拾いしたわ。流石は時影」
二人は両手を合わせ互いの無事を祝い、絹のように美しい黒髪の姫はセーラーのスカートの襞を不思議そうに揺らした。
「あ、姫。衣服はその時代に合ったものが自動生成されるのですよ」
「そうなの。私、時代跳躍なんて初めてだから、慣れなくて。ところで今東暦何年なの?」
真駒の額に玉のような汗が浮かぶ。
「あ、姫。今は西暦でして、江戸時代と言われています」
真駒の右手につけられた緑のリング『時代検索装置』は、検索不可を示すエラーがでていた。追っ手から逃げのびる時に負荷をかけたせいだ。それでも僅か150年のずれで済ませたところは時代跳躍を司どる時影ならでは。
しかし、こんなことは些事にすぎない。
問題は新米くの一真駒がまだ無作為な時代跳躍しかできないという事実にあった。
真駒の額から脂汗が滴り水たまりに溶けた。
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