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「そうですね。結果として誰か変人が入ってくれればいいんですから」
迅が数学パズルを解きながら適当な相槌を打った。しかしそれが思わぬ作用を起こす。
「そうだぞ。新入生獲得イコール新たな変人発掘だ。それに繋がるのならばどういう謎を解明しようと関係ない」
急に亜塔が立ち上がって言い切った。
「どうしてそこまで変人に固執するんですか?」
嫌々ながらも千晴が訊いておいた。問題点がずれている気がするのは気のせいだろうか。
「何を言う。我々のアイデンティティーは変人であることだぞ。吹き溜まりと言われようと科学部に愛着を持てるのも、総ては変人であるが故だ。だからこそ、入部条件は変人であることなんだよ。あの三平方の定理に食いつく真の変人がいるはずだ」
力強い亜塔の演説に、誰もがぽかんとなった。これだけ変人を強調されることもない。
「あの、入部条件だったんですか?」
現在の部長である桜太としては撤廃してほしい条件だった。そのせいで科学部は人気がないともいえる。
「当たり前だろ。今更普通の人間を求めてどうする?そもそもこの部活存続問題だって、我々のような変人を救い憩いの場を提供することだったはずだ。まともになっても意味がない。それにまともになったら、お前たち二年は三年になって肩身の狭い思いをするだけだぞ。俺たちが引退してどんな目に遭ってるのか、原稿用紙750枚分にして述べてやろうか」
亜塔のとんでもない説得に、桜太は頷くしかなかった。しかも引退してから僅か一か月で不満が原稿用紙750枚分に達するとは驚きだ。これは自分たちが普通の環境だけで生きていくことの難しさを物語っている。
「そうだよ。変人はアイデンティティーだ」
二年生たちはそう呟いて納得する。よくよく考えれば、自分たちも部活の存続を話し合う時に変人であることを当然のように前提としていた。
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