嘘であってほしい

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「そうだと良いけれど……」  香澄は照れくさそうに笑った。 「ココでお前に吉報だ」 「え?」 「お前が死んでいたと思っていた俺。とある親切なお医者さん……つっても、今思えば機械いじりしてるおっちゃんだったんだろうな。そのおっちゃんが、壊れていた俺を生き返らしてくれたんだよ」 「嘘……。それじゃあ……!」 「ああ。1000人目の浮気、出来るぞ」  香澄は飛び上がって喜んだ。999人だったのが余程惜しかったのだろう。困ったヤツだなと思いながらも、茂雄が香澄を見る目は優しかった。  香澄はしばらく喜んでいたものの、やがて急に涙を流し始めた。 「……貴方、車の事故で、目も当てられない程ボロボロだったから……もう一生会えないんだって思ったら、もっと優しくして上げれば良かったとか、浮気を掛け持ちして早く貴方の所へ良ければって後悔してたの」 「ああそうかい」 「あと1人、あと1人浮気したら……あとは、2人で幸せに暮らさせて、貰えませんか?」 「ああ、待ってるよ」 「あ、有難う! じゃあ早速誘ってくるよ。芳子(よしこ)に」  香澄が電話をかけにいこうとすると、いやいやと茂雄が割って入った。 「よ、芳子? え、芳子ちゃんって、あのお前の読んでる雑誌に乗ってるモデルと同じ名前じゃ……」 「あら、見たことあるの? そうよ、芳子ちゃん。最後はレディでしめたかったのよね」  さも当然のように言ってのける香澄。茂雄が黙ると、香澄は茂雄を退かせ、芳子へと電話をかけた。 「…嘘…だろ?」  香澄の後ろで、茂雄は苦笑しながら呟いた。 (完)
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