嘘であってほしい

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 アンドロイドと言えば、家電量販店でよく見かける、人の姿をしたロボットのことか。妻と家電量販店へは良く行っていたし、そう言えば、初めて会ったのも確かに家電量販店だった。  いやいや、それにしても自分がアンドロイドとはとても思えない。確かに物凄い勢いで階段から転び落ちながらも無傷だったし、時々体内からウィーンと言う音が聞こえることもあったが……茂雄は、思い返すと思い返すだけ、徐々にその違和感に気付き始めた。 「……オレ、アンドロイドだったのかよ。いや、でもよ。何でこんな親父臭い男選んだんだ?」 「安かったからね」  あまりに単純な理由に、茂雄の胸が抉られる。まぁ、この身なりだ。値段もイケメンのアンドロイドと比べたらゼロが2,3個違うだろう。 「それに、性格は悪くなかったしね。結構愛してたのよ」 「でも、浮気したんだろう? 999人と」 「いやぁ。夫の知らない所で沢山浮気するって、憧れだったのよ。1000人行きたかったって時にアンタ、お陀仏しちゃうから」  なんて失礼な女。茂雄はイライラとした様子で楽観的な香澄を睨む。 「けど、浮気相手999人って、今そいつらはどうしてんだよ」 「お世話は結構してきたけどさ、アンタ同様お陀仏しちゃって。何せ、浮気相手はおじいちゃんのアンドロイドばっかりだったからね」  浮気の為に買われたアンドロイドは幸せだったのだろうか、それとも不幸だったのだろうか。茂雄は考えた。 「まぁ、折角生まれたのに誰にも買ってもらえずサヨナラ。なんてほうが寂しいのかもな。どうも。買ってもらってサンキューな」 「いいや。アタシこそ。何時も家の為に働いてくれて、たまに労って肩揉んだりしてくれて、一緒に寝転びながら、お笑い番組見て笑ったりして。本当に、本当に大好きだったんだよ。今もね。有難う」  二人が礼を言い合うと、999人の茂雄の姿が消え、香澄と茂雄が残された。二人になったことで、先程より冷静に話せそうだ。改めて浮気の話に戻す茂雄。 「浮気に関してはかなり許せんが」 「ご、ごめんなさいね。やっぱり999じゃ納得いかないわよね」 「問題はそっちじゃないだろうっ!?」 「すんません」 「ただ、家事もちゃんとしてたし、俺とも会話してくれて、愚痴も聞いてくれた。妻としては尊敬してるよ。だからきっと、他の爺さん達も同じ気持ちだったんじゃ無いかと思う」
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