そんなのは嘘だ!

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翌朝の学校の話題は、『エブリマンが敗けた』で持ちきりだった。 僕の親友たるリョウタも、僕がクラスに入るなりその話題をふってくる。 「ケンスケ!昨日のエブリマン見たかよ!?」 「うん、見たよ」 興奮するリョウタに対し、僕の返事は冷めたもので……。 しかし、そんなことはお構いなしにリョウタは話を続ける。 「エブリマンが死んじゃったら、誰が地球の平和を護るんだろうな? やっぱりそう新しい正義の味方が出てくんのかな? エブリマンって、確かコクレンってとこの対怪人特殊警備チームの改造人間だったよな? もうすでに改造されてたりしてな」 熱く語るリョウタだけど、僕はその言葉が許せなかった。 リョウタの胸ぐらを掴み、抑えきれないモノの全てをぶつける。 「ふざけんなよ! エブリマンは、俺達みんなのために戦ってたんだぞ! それなのに、お前ときたら! だいたい、考えてもみろよ! 改造手術は失敗する可能性が高いんだ。 エブリマンの前に改造手術を受けた人は、みんな死んでるんだぞ! そんな危ない手術、誰が受けるんだよ!」 勢いのままに全てを吐き出し、さすがに息が続かなくて、肩で息をする僕。 リョウタもしゅんとした。 「ゴメン。そうだよな。 エブリマンは死んだんだよな。 それを悲しまないといけないのに、俺ときたら!」 手をグーにして、自分を殴ろうとしたリョウタ。 その手を僕が両手で優しく包む。 「いや、俺こそゴメン。 カッとなってたよ。 いつもエブリマンが、『常に冷静であれ』って言ってるのにな」 自嘲気味に笑う俺の肩を、リョウタが掴む。 「エブリマンが死んだんだ! 冷静でいられるわけないだろ。 仕方ないさ」 「リョウタ、ありだとう」 頬に光るものを、袖で拭うと、リョウタの手をとる。 「泣いてる場合じゃないぞ。 エブリマンが死んだことで悪の怪人軍団が地球に総攻撃をしてくる可能性がある。 悲しむのは、とりあえず後だ! まずは、対策を考えないとな」 そうだ、僕らは立ち止まってはいけない。 悲しみを胸に前に進まないといけないんだ。 よし、みんなで緊急会議だ! そう言おうと思った瞬間、チャイムが鳴り響く。 そして、少し遅れて入ってきたのは、号泣しているマエダ先生。
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