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「どうしますか? 真相を知ったわたくしたちも冷泉同様に消すのですか?」
ツズルが怖じることなく嘯く。
「あなたたち本の役目は何ですか?」
ツズルがそう問い掛けた瞬間、
ドサドサドサッ──
宙で羽ばたいていた本たちが一斉に墜ちた。
辺りにまた静寂が戻った。
「終わりましたわ」
まるで終演を告げるように、ツズルが寂しい声で言った。
ようやく肺に溜まった息を吐くと、まだ絵本を胸に抱える悲しそうな娘を見る。
「……本の役目って何だい?」
「本は人の友人ですわ。きっとあの子たちは、その友情を裏切ったのを許せなかったのです」
「それが冷泉の死因か……」
「どうしますか? 冷泉は本に殺された、と警察に通報しますか?」
「それは止めておくよ」
自分の部屋の本棚を思い出しながら、諦めの吐息をもらした。
「それにしても命拾いをしたな」
「なかなかにスリリングでしたわ」
ツズルが眼を細めて爛漫と笑った。
きっと本を友人だと公言する娘を、あの本たちは手に掛けることができなかったのかもしれない。
僕は家に帰ったら、本棚に押し込められている友人に挨拶をすると思いをひそめた。
──密室領域のテウルギー 終演。
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