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水溜まりは海をも越えて
「チョリーッス!そこの彼女ヒマっしょー?」
陽もまだ高い雨上がりの下校道。少し寄り道したくなった私の前に現れた小麦色の肌の女子高生は、心なしか水溜まりから少し足が浮かんでいるような気がした。
「な、なんでこんな所に今時見ない感じのギャルが!?し、しかも浮いて…」
「いやあ、実はアタシ10年くらい前に海で溺れ死んだんだけど成仏できなくってさー。死んだけど海好きだし、行きたい所があるんだ」
「…ちなみにどこで?」
「湘南!」
私はうっかり話を掘り下げた事を後悔した。何故ならここは青森県だからだ。さすがにここから神奈川県は遠すぎる。
「まあ同じ本州だし余裕っしょ!という訳で週末にでも、アタシを湘南の海に連れてって♪」
「な、なして私がそんなー!?」
水溜まりから現れた押しかけ幽霊の、強引だが触れた感覚のないハイタッチに、私はもう困り果てて半ばやけくそに笑うしかなかったのだった。
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