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影狼
「もうやめるんだ…狗郎」
我らのすぐ前まできた狗郎は、歩みをとめ我らを見下ろしている。
そこで気がついた事があった。
あふれでる狗郎の殺意の中我は意を決し、言葉をなげかける。
影狼
「狗郎。その殺意…いったい誰にむけておるのだ?」
我が気がついたこと。
それは狗郎の殺意が我らには一切むけられていない事だった。
しばらくの沈黙が続くなか、一華が口をひらいた。
一華
「私は…私はただ、また昔みたいに狗郎の隣を歩きたい……ただそれだけなの…」
一華…やはりお主も我と同じであったか。
一華
「あの日、クローディアが亡くなった日…私はもうあなたの側には居られないと思った」
そうだ……。
一華
「あなたの力が強まった時、私達は影から出られなくなった。」
お主はちゃんとわかっていたのだな……。
一華
「もっと私に力があれば、あの日クローディアは死なずにすんだかもしれない。そう思うと私は狗郎に責められてるような気がして自分を情けなく感じた。あなたが大切にする全てを守ると言ったのに」
狗郎はあの後、我らを気にかけていた。
一華
「それで逃げてしまった…あなたは向き合ってくれたのに、いたたまれなくなった私は、あなたの大切な人を守れなかった私に失望したと、都合よく甘えてしまった…」
そうだ…狗郎が我らと一線をひいたのではない。一線をひいたのはむしろ我ら……。
一華
「でももう逃げたりしない!甘えたりしない!だから…だからまたあなたの隣を…」
影狼
「すまなかった。我らが逃げたばかりに主だけに業を背負わせてしまった。…許してくとは言わん!だがこれからは主の隣を歩ませてくれまいか!?主のために力になろう。業もともに背負おう!主ともに地獄にも落ちよう!」
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