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一華
「…クッ」
さらに激しくなる東堂の斬撃に、一華は焦り奥歯を食い縛る。
一華は攻めることができずいたが必死に鎬を削り、東堂の斬撃をいなし続ける。
だがその時は訪れた。
ガガキィィン
連続した金属音とともに一華の刀は、その華奢な腕と身体ごと流された。
東堂は手を庇い過ぎる一華の隙をつき影闇を界王の鍔にぶつけ勢いよく一華の右方向へとはじいたのだ。
結果一華は身体ごと流され姿勢を崩すことになり、左側は完全にがら空きになる。
その隙を東堂は見逃すはずもなく……。
ザンッ
東堂の上段に構えるその凶刃は、一華の左肩から襲い右の腰の辺りまで通過した。
東堂
「終いとは…残念だ」
ブンッ
低い姿勢となった東堂はとどめとし、一華の右の腰から左の腰へと両腕を振るった。
東堂の時間はその瞬間、ゆっくりとすすんだ。
東堂は非道の限りを尽くしたが、武人の魂を取り戻してくれた一華に感謝した。
仲間が危機的状況になって尚、手を出さず一対一の勝負を最後まで見守った狗郎と影狼にも感謝をした。
そして東堂は武人として振る舞った一華を忘れまいと、その顔を見上げた。
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