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東堂が見上げたその先には一華の顔がある。
美しく……満面の笑みに歪ませた一華の顔が。
東堂
「!?」
異常な光景だった。
斬られたはずの一華は笑みを浮かべ右手に影闇を持ち、その腕を高々と上げていた。
さらにその上を回りながら舞う一口の両手で握られた刀が目に入った。
東堂はその刀に見覚えがあった。
それは紛れもなく東堂の愛刀、界王だったのだ。
影狼
「フッ…魔性の女よ」
影狼が笑い、そう言葉を発していた時、東堂は自分の腕を見ていた。
その腕は手首からバッサリと斬られ、霊体にもかかわらず血が吹き出していたのだ。
再び一華の顔を見上げるがやはりその顔には笑みがあふれている。
東堂は悟った。自分は騙された、裏切られたのだと。東堂の気持ちを裏切った一華の顔は嬉しそうだった。
そう…一華は嬉しかった。本当に嬉しかったのだ。
愛する男の心を乱し、この件で手を汚す原因となった東堂が武人としての魂を、誇りを、尊厳を取り戻しそれを踏みにじり、奪う事ができるのが嬉しかった。
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