とあるマンガの最終回

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僕の名前は、出口アチラ あー勿論これはペンネーム、本名は公表しませんあしからず。 ご存知の方もけっこう多いと思うけど、そう、今や大人気、アニメ化を待ち望むファンも大勢いることだろう、週刊少年ユニーク連載中『KTD―怪物退治大作戦―』の原作者だ! いやぁ、マンガとか映画は大好きでよく見たり読んだりしていたけど、小説なんて殆ど読んだ事が無い、でも試しに書いた原作が週刊少年ユニークのコンテストで大賞とっちゃって、コミック化、そして連載、あれよあれよと人気作に、原稿料とコミックスの印税でけっこう良い暮らしさせてもらっています。 なにしろ働かなくて良いのが嬉しい、昼に起きてコンビニ行って、アニメ見て、ゲームやって、ピザ食って、マンガ読んで、眠くなったら寝る、天国、まさに僕のユートピアが実現したのだった。 しかし、その理想郷に響くこの警告音、さっきから何件も何件も僕のスマホにかかる催促のメール、全く不愉快極まる、差し出し人は、谷向井恵人、KTDの作画家だ、その内容は。 「出口センセイこんにちは。 分かっているとは思いますが、締め切り、し明後日です、これは僕が書く時間も含めて完成品の入稿のリミットですので、もう書き始めないと間に合いません、故に出来上がっている所までで結構ですのでネーム下さい、待ってまーす。」 なんでアイツ編集でもないのに催促なんかしやがって、しかも朝から8回も、腹立つわ、黙って待ってろっつーの! 谷向井さんとは打ち合わせで何度かしか会った事なく、完全に仕事上の付き合い、ビジネスパートナーだ、痩せていてギョロ目が印象的でやたら早口で話す人だった、性格とか趣味とかそんなのは知らないけど、彼の描く絵は物凄く上手い、特にヒロインの魔ユミンちゃんの色っぽさったら、我が作品ながら萌えてまう程、素肌の美しさ、柔らかさ、服の下の体のライン、そして何故か見えないギリギリのもどかしさも、リアルでは表現不可能な真のエロチシズムを見事に描き上げていた。
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