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失礼極まる、確かに物は全部出しっぱなし乱雑に置いてるけど広いんだし良いじゃん、ゴミだって捨ててるし、服も臭くなったら洗ってる、布団もたまに消臭スプレーしてるし、埃こそあれど、病原菌やカビなどは無い、何を指して汚いと言うのか、問いただしてやる、と思った矢先。
「あーくそっ、本当にハラの立つ、高林のヤツ、こんな所に3日も居なきゃならないなんて、最悪だ」
え、どう言う事だ、高林って編集長の事?
「あの、高林さんが何を?」
谷向井さんはバッグの中からスリッパを取り出し、床にスパンと置いて、それを履いて恐る恐ると上がり込んできた、ハンカチを口に当てて。
「ああ、高林編集長命令、原稿完成するまでここに住み込んで、締め切りに間に合わせろ、だってよ」
す、住み込みってなんだよ、いくら編集長命令だって、ここ僕ん家だぞ。
「あと、今度原稿落としたら、クビだって」
え、えーっ、た、確かに、あり得る、なぜなら僕は、過去一度[作者の都合により休載させて頂きます]しちゃった事があるのだ、やはりアイデアが出なくて、あわわ、本気か高林編集長。
「と言う訳で、出口センセイ、ネームを見せて貰えますか」
「まだ白紙ってなんだよ!」
ほんの少しは有ったであろう、その期待を裏切った後、谷向井さんは憤りと絶望を合わせた言葉が見つからず開いた口をワナワナと震わせるだけであった。
僕は一呼吸間を空け、弁明を始めた。
「必ず誰にでも、そんな目に合う時があるものです。
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